ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

自分からいのちを捨てる

 「だれも、わたしからいのちを取った者はいません。わたしが自分からいのちを捨てるのです…」(ヨハネ10:18) 
 私とはイエス・キリストの事です。ユダヤ人の一派に捕えられて十字架に向かわれたように見えますが、ご自分で向かわれました。
 佐藤春夫氏の『初期詩集』を読んでいて、清水正二郎という九州鉄道管理局門司構内主任の事を初めて知りました。おそらくこの人の名を覚えている人は、ほとんどいないでしょう。
 佐藤氏の説明によりますと、明治四十四(1911)年12月、「至尊文字行幸に際し文字駅構内に於て御召列車脱線の事あり、為に御乗車約一時間遅延す。九州鉄道管理局文字構内主任清水正二郎、一死以て罪を償わんとて轢死す」とあります。明治天皇の乗った御料車後部車輪が文字構内で脱線した為、陸軍特別大演習統監に向かう筈が、1時間遅れてしまい、清水正二郎は責任を感じて、下関・幡生トンネルで列車に飛び込み自殺しました。33歳の若さだったそうです。佐藤氏はこの清水正二郎を悼んで詩を作ったのでした。

左図は玄洋社大正元年に建てた清水正二郎顕彰碑
 一方ネットで調べていたら、田中健之という右翼の人がブログで清水正二郎に触れていました(http://blogs.yahoo.co.jp/takeyukitanaka1105/2800024.html)。題は「責任の取り方」です。田中氏は同じ清水という苗字でも、名前の違う人の事に言及していました。それは清水正孝、2011年東電福島原発事故時の社長です。
 田中氏は「清水が過労だ、めまいだ、高血圧だと言って都内の病院の高額な特別室にいる間、福島双葉町の人々をはじめ、半径三十キロ圏内に住んでいる人々は、極めて不自由に避難生活を東電の原発事故によって強いられている…また、原発が最悪の事態とならないためにも、家族と別れて決死の被曝を覚悟で、日夜徹夜で原発修復作業をしている作業員が大勢いる…東電社長清水正孝は、門司駅清水正次郎の行き方に学び、殉職覚悟で現場の陣頭指揮に立つのか、または自決の覚悟を以って人間としての誠意を果たすべきである」と書いています。私と立場は違っても全うな意見だと思いました。清水正二郎は一人で自殺しました。佐藤春夫氏は「世人みな美しとたたふるものを、若草の妻もな泣きそ…」と表現しました。
 同じ明治時代でもその2年前明治四十二年二月に、北海道の塩狩峠で鉄道院(国鉄の前身)職員の長野政雄が自殺しました。その理由は塩狩峠区間に差し掛かった旅客列車の客車最後尾の連結器が外れて、客車が暴走しかける事故が生じた為、多数の乗客の居たその客車に身を挺し、暴走を止め乗客のいのちを救う為でした。

 この事故を取材した故三浦綾子が『塩狩峠』という小説を書いた為、長野政雄の名は、明治の当時以上に私たちの間に知れ渡りました。ちなみに長野政雄はクリスチャン、三浦綾子も勿論そうです。その小説は今でもよく読まれています。私の行っている教会では初めてその劇が特別集会で行われ、感動と共に涙が溢れてしまいました。
 この3人知名度清水正孝、長野政雄、清水正二郎という順になりますか。
 清水正孝氏は生き残り、2012年6月富士石油社外取締役天下りしました。彼は今刑事告訴を受けて裁決を待つ身分ですが、その心中は如何なものでしょうか。
 ところで長野政雄の死は、まさに救い主イエス・キリストの模範に従ったものでした。自ら進んで私たちの罪を負い、十字架で死んで下さいました。それゆえそのキリストを信じる者は皆、救われて永遠のいのちを賜物として頂く事が出来ます。