ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

TPP交渉の怖さ

 「あなたは、注意して、あなたが入って行くその地の住民と契約を結ばないようにせよ。それがあなたの間で、わなとならないように」(出エジプト34:12)
 昨年12月図書館で農文協編『TPPと日本の争点』を借りて読みました。既にTPPについてはnice100showさんが精力的に批判と啓蒙の活動を続けており(http://d.hatena.ne.jp/nice100show/20121226/p1)、12月26日のブログで『よくわかるTPP48のまちがい』という本を紹介してくれました。
 これがTPPの本質を突く本だと思い、早速図書館の検索をかけたのですが、まだ納入されておらず、それより8か月前出版された『TPPと日本の争点』を借りて、じっくり研究しました。だいたい巷に出ているTPP反対論は、一人の著者によるものが多く、意外と分かりにくいものがありましたが、この本では21人の著者が10ページ以内で各分野からその危険性を指摘していて、非常に分かりやすいものとなりました。執筆者の中には今話題の孫崎亨氏や、山口二郎氏、東谷暁氏、広井良典氏など錚々たる人々が含まれています。

 TPPとは環太平洋経済連携協定の略語です。これが日本にとっていかに危険なものであるか、この本を通し改めて実感しました。
 例えば日米関係で言えば、この協定を結び強化する事は、実は「互恵的な自由貿易を実現するものどころか、それとはまったく対極的にある政策」(京大助教中野剛志氏)であって、「アメリカによる近隣窮乏化政策」(同)であり、「相互依存関係にある中小国の自由貿易協定から、アメリカの経済戦略を追求する手段に変質している」(山口二郎氏)のです。また米国は昨年12月での失業率は7.8パーセント、ここ3年間は低下傾向にあるものの、まだまだ雇用創出を図らなければなりません。しかも財政赤字で崖っぷちに立っている中、内需より外国への輸出を拡大する事により雇用を増やすという戦略が採られています。それは逆に他国の雇用を奪う事になります。極めて利己的・攻撃的なものです。山口氏はその雛形を米国内のウォルマートを例に出して述べています。つまり貧者の味方を装うこの安売り王は、その店舗拡大で、貧者にモノを買わせ、周辺地域の小売業を根こそぎにします。さらにそこで働く労働者は全くの低賃金です。ですからいつでも嫌な労働者を解雇し、新たに雇い入れる事が出来ます。そこへの納入業者も価格を抑えられてしまいます。結局「徹底した自由化と低価格の追及は、人間の生活を破壊する」事になります。書籍関係のアマゾンは、既に日本で同じやり方をしており、今後も各地への物流センター増設で、地元の本屋さんなどはどんどん潰れます。TPPはまずそうした広い視野から、米国の狙いを理解する事より始めるべきです。
 今盛んに論議されている大阪都中京都構想、道州制にしても、「グローバル企業優先の新自由主義的な『地域主権改革』モデル」(岡田知弘京大教授)であって、米国を主体とする多国籍企業が積極的に誘致され、中小企業は淘汰され、福祉・教育・医療・介護・生活保護などの経費が大幅に削減され、一層の格差と貧困が広がって行く事になるそうです。当然「若者の働く場が失われ、地域を支える人材も税収もしぼんで」(高橋正幸新潟県立大学准教授)、地域経済が破綻します
 この米国主体のTPP政策に対して、「今一番重要なのは対米貿易環境ではなく、中国を始めとする東アジアとの貿易環境だ」と主張するのが、孫崎氏(元外務省、現防衛大教授)です。なぜなら中国のミサイル攻撃があると、在日米軍基地は一瞬にして使用が不可能となり、潜水艦も中国が米国を圧倒する為、「中国の核兵器に対して、日本を守るとされる『核の傘』は実はない」事になるので、「日本に軍事的に対応する選択肢はない」のです。ですから東アジアとの平和的な共存と相互に発展する道を模索するしかありません。
 日本金融財政研究所長の菊池英博氏は「TPPは日本国民の金融資産の簒奪をねらう」ときっぱり言い切ります。つまり大局的にはそれによる「日本経済の破壊策」なのです。それは貿易協定による関税引き下げ、情報・通信、日本郵政、保険、運輸、農業、医療、その他、様々な分野で、既に実行されて来て、これから本格的に攻撃して来る事になります。既にと言ったのは、1人材派遣の自由化2大規模小売店舗法の廃止3建築基準法改正4商法改正5法務制度改革6公正取引委員会の強化7郵政公社の民営化8日本の医療システムの破壊と市場原理型医療の導入」を菊池氏は挙げています。それらは主として小泉・竹中コンビにより行われて来ました。ジャーナリストの東谷暁氏は、彼らの行ったひどい行為は1国内から91兆円召し上げて米国債など海外投資に振り向けた事、2米国資本による買収を狙った郵政民営化(*民主党政権の誕生で挫折、そうでなかったら日本国債に穴が開き、国家財政が破たんに追い込まれる事になったそうです)、3日本の金融機関の買収(*標的は三菱UFJ銀行、未成就)でした。

 最後にノンフィクション作家の関岡英之氏による「危険・野蛮この上ないTPP『投資協定』」を取り上げておきます。
 関岡氏は「米国の狙いは、外資に関する規制を撤廃させて、相手国の国内において米国系の企業やファンドが自由に利益を追求できるようにさせる」ことだと言っています。そして最も危険なISD(投資家vs国家の紛争解決)条項に言及しています。それは被害を受けた外資が、世界銀行傘下の国際仲裁所を場に、国家を訴える事が出来るようになる条項です。つまり外資と例えば日本という主権国家が対等の地位に就き、「外資の利益のために国家の立法行為や行政行動…を制限する」事が出来るという野蛮で危険な条項です。それによって承認を強制され得るのは、食品添加物の認可、農薬の米国基準への緩和、有機農作物の基準緩和、遺伝子組み換え食品無表示、ジェネリック医薬品の使用不許可などです(安田節子埼玉大学非常勤講師)。TPP問題は原発同様絶対忘れてはならない事柄です!
 *上記もう1冊の本の読後感も近く公開します。