ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

頑張っても報われない時代

 「心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くして、あなたの神、【主】を愛しなさい」(申命6:5)。
 *神に向かう努力は、決して無駄に終わる事がありません。
 2013年10月7日、私がマークしていた本『女たちのサバイバル作戦』(上野千鶴子著)、まだ図書館に予約中に、その書評をSPYBOYさんに出し抜かれてしまいました(http://d.hatena.ne.jp/SPYBOY/20131007/1381156234)。

 上野千鶴子氏は京大在学中から知る人ぞ知る全共闘の闘士でした。その後は私の大阪茨木時代行った事のある、高槻の高台の平安女学院大学短期大学部で教え、しばらくしてから東大の助教授に抜擢されました。非常に頭の良い人で、彼女の論敵になるような人はほとんどいなかったのではないでしょうか。
 その上野さんですが、最近は対談の記録など短いものが主体でしたが、今度の上記の本は新書とはいえ、340ページもある大著とも呼べるものです。ぎっしり詰まり、中身も非常に濃く、SPYBOYさんの書評も的確です。これはまさに新自由主義経済体制下で苦しんでいる男性にも読んで欲しい本です。
 私は特にその第六章「ネオリベが女にもたらした効果」から、勝間=香山論争について触れた箇所を再度おさらいしたいと思います。
 ダーウインの競争と最適者生存の思想を色濃く反映させている新自由主義ですが、それまでは多かれ少なかれ皆が「がんばれば、努力すれば報われる」という事が、或る程度実現して来ました。
 しかし今は違います。上野氏は「能力と努力だけではどうにもならないことがいくらもあります」と、その例を挙げています。若者の非正規労働者はもはや流動化せず、固定化したままで、「厚労省ニートやフリーターの定義は三四歳まで。それを過ぎるとタダの失業者か貧乏人です」。そして就職氷河期の続く現在、就活に失敗すると、自分の努力が足りなかったと、東大生でも意気消沈してメンタルヘルス系に問題のある人々(=メンヘラー)が増えているそうです。競争に勝ち抜き「勝者になれば他人を見下し、敗者になれば責めを自分に負うしかない社会」が到来しています。
 ネオリベのもっともおそろしい効果が、「自己決定・自己責任、優勝劣敗の原則」となって、若者の心に定着しています。
 その流れの中で、上野氏はいわゆる「勝間=香山論争」を引き合いに出しています。写真左が勝間氏。

 勝間とは勝間和代氏、経営学関係で幅広く活躍している人です。香山とは香山リカ氏、精神科医として心の病に取り組んでいます。挑んだのは若者たちの頑張って力尽きた状況に精通している香山氏で、本になっていますが、その題が『勝間さん、努力で幸せになれますか』でした。ここからカタカナ名、カツマ―、カヤマーという言葉が、勝ち組、負け組の象徴として登場します。一生懸命努力しても報われなかった人々、いや努力しようにも出来ない人々がいて、心身共に病み、「不安と不満、自責と怒りが鬱積しています」。香山氏は診察室でそうした人々を多く診て来たので、上記上野氏の言う「能力と努力だけではどうにもならない」人々の実態を全く把握していないか、無視していて、そうした女の人々に幻想だけを抱かせ続ける勝間氏に我慢が出来なかったのでしょう。
 その勝間氏が掲げる「努力すれば報われる」自立した女の条件として、上野氏が次のように要約しています。1年収六百万以上稼いでいること、2他人に自慢できるボーイフレンド(年収一千万以上)がいること、3よい年のとりかたをしている(成功の階段をのぼりつづける人生を送っている)ことです。まさにネオリベ(=新自由主義)の象徴的存在です。2010年に出た本ですが、それから3年後身の回りにそんな条件を満たす人がどれほど居るでしょうか。米国と同じく1パーセント位では?
 従って勝間氏は負け組、負け組予備軍から手ひどい批判を受け、現在あまり登場する機会がないと思います。
 そのように新自由主義思想は、頑張って報われた人、頑張ってこれから報われそうだとの幻覚を持ち続けている人、頑張る競争に身も心も病んで、社会のどん底に押しやられた人などを、容赦なく峻別してしまう残酷なシステムです。勝ち組でさえ、それを維持する為鬱的になっています。神はそんな事を望んで人間を造られたのではありません。いつかこんな異常なネオリベ思想を打ち砕いてしまわれるでしょう。