ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

額田勳著『孤独死』を呼んで、東日本大震災の事を考えた

 「貧しい者は決して忘れられない。悩む者の望みは、いつまでもなくならない」(詩9:18)。
 図書館で上記の本を借りて読みました。副題は「被災地で考える人間の復興」です。

 額田氏は京大・鹿児島大を卒業、故郷の神戸に拠点を置いて終末期医療の問題などに取り組み、神戸みどり病院院長〜理事長時代の1995年、阪神大震災に遭いました。病院も被害が大きく、ライフラインが1か月断たれ、苦しい思いをしました。その経験から間もなく、被災地最大の西神第1・7仮設住宅に、仮設診療所"クリニック希望"を開設し、仮設住まいの人々の診察を始めました。
 この本はそこでの様々な体験から得られた事が書き記されています。特に題にあるような孤独死の事例が多く出て来ます。地震が起き、家が倒壊し仮設住宅に入居した人々は、困苦に満ちた生活を余儀なくされました。しかも孤独死を防ぐ為に開設されたこの診療所があるにもかかわらず、孤独死は相次いだのです。スタッフたちは大きな衝撃を受け、悄然としてしまいました。
 そこで徹底的な洗い直しがされたわけですが、孤独死として三つの特徴が際立つものとして浮き出されました。それは1一人暮らしの無職の男性、2慢性の疾患を持病としている、3年収100万前後の低所得者というものでした。額田医師は「仮設住宅孤独死とは、孤立、失職、慢性疾患が相乗する現代の低所得者層において発生する」ものと述べています。
 さらにそのような情況から、震災後4年経て、仮設暮らし又は復興住宅に入居した人々の中で、自死を遂げる人の数が急増しました。額田医師は特に焼身自殺を磨げた女性の事を取り上げています。不遇な生活の果てに、焼身という衝撃的な方法で、しかも屋外でその死を遂げたのは、「抗議の所作」だったのか、誰かに止めて欲しいという気持ちを抱きながらも、なお深い絶望の果ての行動だったのか、額田医師は自問しています。また「先生お願い、楽に死ねる薬あらへんやろか」と問う人々が多くいました。
 さらに終章でも額田医師は「実に孤独死とは、貧困の極みにある重病の被災者が、肝心の医療も含めて周囲から疎外され、孤立の果てにこの世から消え去ることである」と憤っています。
 そして最後に「社会の質を映すといわれる弱者の現状を見つめ直し、本質的な人間の復興、真の共生への道を探ること、それこそが阪神・淡路大震災から学ぶ最大の教訓ではないだろうか。阪神・淡路大震災は終わってはいない。いや終わらせてはならない」と述べて、書を閉じています。
 額田医師は2012年、東日本大震災の翌年亡くなり、この本ではその事に触れられていません。もっと長生きしていたら、きっと東日本の場合、ほとんど何の教訓も学んでいない事への強い憤りと抗議の本を記した事でしょう。それを解説で南相馬の地域医療を支援している上昌弘医師が引継ぎ、補足していました。
 東日本大震災後、今尚多く存在する仮設住宅。ほんの僅かの復興住宅が完成したに過ぎません。しかも復興住宅に移れたとしても、絆が断たれてしまった以上、今後孤独死・自殺は相次ぐ事でしょう。その防止の為に尽力出来たらと強く願うものです。