ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

川越厚著『ひとり、家で穏やかに死ぬ方法』を読んで

 アブラハムは平安な老年を迎え、長寿を全うして息絶えて死に、自分の民に加えられた」(創世25:8)

 川越医師はクリニック川越院長であると共に、この本の題にもある通り、特に独身の末期がん患者の在宅ケアを支援するグループ『パリアン』(ラテン語パリウム=緩和から来ている)を設立し、訪問看護、居宅介護支援、訪問看護などのサービスを提供している、末期がん患者対応のプロです。写真左http://www.pallium.co.jp/profile.htmlより。
 この本では数人の末期がん患者の在宅での看取りについて、具体的に記述している為、独居死、孤独死などを日頃考えている独身者には、極めて大きな益となる筈です。
 まずこれは家族で住んでいる人にも言える事ですが、特に「独居者の場合、最期の瞬間を自宅で迎えたいのか、病院を希望するのか、その点をしっかり聞き出さないといけません」と川越医師はきっぱり。別の所に住んでいる親戚などが、自宅で苦しんでいる身内を見て狼狽し、その意志とは関わりなく勝手に病院に連絡し、入院させようとする事が起こり得るからです。
 しかしその病院に緩和ケア病棟があっても、患者やその家族が延命治療を望んでいるなら、一般に入院は不可能、拒否されます。
 また患者が癌末期でしかも認知症を患っているなら、病院、特養ホーム、老人保健施設などは拒否します。
 それで在宅ケアを望む末期がんの独居者の場合、川越医師は看護師やヘルパーなどとしっかりチーム体制を整えて対応します。高度な専門的知識・技術を持ち、医療にも福祉にも明るい献身的な看護師が特に重視されます。独身の末期がん患者が死に直面すると、特に孤独と不安がつきものなので、それを取り除く事は医師、看護師のみならず、ヘルパーなどから構成されるチームの重要な仕事になってきます。
 彼らが末期患者にまず施す最優先事は、患者の肉体的な苦しみをしっかり緩和する事です。それが無いと患者は痛みに神経が集中し、まともな会話が難しいからです。その為には麻薬の代表格モルヒネが欠かせません。今は在宅で持続注入が出来ます。これは痛みに弱い私にとっても朗報です。画像はhttp://blog.goo.ne.jp/symc1361/e/a528afbed06577f0d086abdd33e9d46cからお借りしました。訪問看護師さんのすてきなブログです。

 それによる身体の制御が出来て初めて、周囲で見守るチームや家族との対話が可能になるのです。
 患者は痛みが制御出来れば、比較的元気になります。でもそこで覚えておきたいのは、患者に残された時間が極めて短いという事です。半数の患者がだいたい一ヶ月以内に亡くなるそうです。
 ですから家族、友人、やりかけている仕事、カネ、地位・身分など、生きてゆく為に必要な鎖を上手に外してあげなくてはなりません。それは旅立つ準備となり、時として悲しく一日中泣くような事があるかもしれません。でもそれでよいのです。一緒に泣いてあげる事も大切です。あとはすっきりします。「喜ぶ者といっしょに喜び、泣く者といっしょに泣きなさい」(ローマ12:15)。
 こうしてこの人と人との繋がり・信頼関係の中で、患者は安らかな永遠の眠りに就く事が出来るでしょう。
 まことに「人は生きてきたように、死んでいく存在」です。渡辺淳一氏の小説にも出て来ますが、生前わがままで独裁的に生きて来た人は、まだ死にたくないと言って、妻を虐待しながら死んでゆきます。そのように死んでゆく他ありません。信徒のように常に死を意識して、それをいつでも受容するような生活を送って来た人なら、最期の時も平安であり得ます。
 この本は在宅死、孤独死・独居死に不安を抱く人には、うってつけの本です。是非読んでみて下さい。たとえ病院に入っていても、そうした死はあり得るからです。病院は決して万能ではありません。
 私も新たな出発に際し、特に独居死に対する周到な準備を重ねておきたいと願っています。
*間もなくNTTのVDSLを撤去し、1月13日の工事までネットが使えなくなります。ご了承下さい。