ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

添田孝史著『「東電原発裁判」−福島原発事故の責任を問う』を読んでいて思ったこと

「すると、王は彼らに答えて言います。『まことに、おまえたちに告げます。おまえたちが、この最も小さい者たちのひとりにしなかったのは、わたしにしなかったのです。』こうして、この人たちは永遠の刑罰に入り、正しい人たちは永遠のいのちに入るのです」(マタイ25:46−47)。

 添田さんの本の紹介は昨年7月以来2回目になります。現在進行中の裁判では、既に業務上過失致死傷で起訴されている東電の勝俣、武黒、武藤氏が無罪を主張しています。
 高さ15・7メートルに達する津波が到来するという警告が既に出されていたにもかかわらず、それは試算に過ぎず想定外で、事故を防ぐ事は出来なかったというのが主張の骨子だと思います。
 2002年政府の地震調査研究推進本部、略して地震本部は、福島沖で大地震が起きる可能性を発表しました。東電の子会社はそれを踏まえ、福島第一原発に高さ15・7メートルの津波が押し寄せ、敷地を越えて全電源喪失に至り、事故を起すという計算結果を2008年には東電に報告していました。
 そこで東電の津波想定担当者は海抜20メートルの防潮堤を作るべきだとする具体的な計画案を、武藤氏に報告していました。しかし被告の3人はいずれも、経費削減推進の問題もあって、その計画を先送りし〔*2016年1月を予定)、漫然と運転を続けました。それに対しては、東電社員も、政府も、大学研究者も、繰り返し切羽詰った訴えを事故直前までしていました。しかし無視される形で原発事故は起きてしまいました。
 2006年「耐震設計審査指針」(=原発建築基準法)が全面改訂され、古い原発が安全かどうかチェックする作業(=バックチェック)が開始され、電力各社は津波を想定しない中間報告書を2008年に出していました。 
 しかし東北電力福島第一原発に近い女川原発について、上記バックチェック中間報告を、さらに貞観地震津波最近研究成果も踏まえ、2010年にはその最終報告書を出していました。
 それを受けて今の規制委前身である原子力安全保安院は、原子力安全基盤機構(JNES)にクロスチェック〔電力会社の計算結果を別途計算し、結果が正しいかどうか確かめる作業)を依頼しました。
 2010年11月JNESはそれを受けて、女川原発の安全性を確かめた報告書を出しました。 https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/3882.pdfでは、宮城県もそれを「近況」の項で確認しています。
 ところが非常に貴重なこの2つの文書は、2011年3月以降改ざん隠蔽などがなされ、原文のまま私たちが読む事は出来なくなりました。なぜこんな事が?勿論国の原発推進政策の為です。やったのは政府の高級官僚たちでしょう。かたや怠った東電、裁判のためにも極めて不都合な文書です。
 政府事故調査・検証委員会のメンバーは、畑村洋太郎氏、吉岡斉氏、柳田邦男氏らも含まれ、彼らによる東電事故の解析は私も大いに期待していました。しかし添田氏によると、実際の運営は高級官僚で占められた事務局でなされた為、メンバーは上記文書を全然知らなかったようです〔特に柳田氏が証言)。添田氏の推定では1保安院が事故調に提出していなかった、2政府事故調の事務局(官僚独占)が柳田氏や畑村氏に見せなかったの2通りです。
「失敗学」の権威畑村氏は相当それに関与していると想像していたのですが、事実は全く違いました。
 http://webronza.asahi.com/science/articles/2015032600003.htmlにおける畑村氏へのインタビューから見えて来たのは、氏の著作『失敗学のすすめ』冒頭にある「失敗」の定義そのものです。即ち「人間が関わってひとつの行為を行ったとき、望ましくない、予期せぬ結果が生じること」です。原発事故前、東電の上記3責任者がそういう行為を行い、原発事故後はこの3人をかばう形で、行政の高級官僚が隠蔽しています。「クロスチェックをしたことは記憶にない」ー典型的な東大話法です!空恐ろしいほど。一方国会事故調の報告はPDFファイルで646ページもあり、政府事故調よりずっと踏み込んでいます(http://www.mhmjapan.com/content/files/00001736/naiic_honpen2_0.pdf)。それで上記2つの文書を知っていたら、積極的に取り上げたと思いますが、私が画面をざっとスクロールした限りでは見つかりませんでした。どなたか見つけて下さい。
 さらに官僚の悪行は、最近の柏崎刈羽原発でも遺憾なく発揮されています。新潟県知事米山隆一氏は、東電の徹底した事故検証なしには原発を再稼動させないという強い決意を示し、それに手を焼いた官僚たちは、最近巧緻な手段で米山氏を失脚させようとしています。即ち経済産業省による原発立地自治体への交付金規則の「改正」です。それによると再稼動審査合格後、9ヶ月経ても再稼動されない場合、最大12億円という交付額を減額するそうです。それは数年後と考えている米山知事には大きな痛手になります〔朝日新聞の17年12月28日記事より)。
 民主主義政治もへったくれも無い官僚たちによる事故調の報告の骨抜き、原発推進、失敗から学ぼうとしない姿勢では、必ずや次の原発事故は起こります。必ずです。わざわいだ、偽善の官僚家たち!
 私はしばらく怒り狂っていましたが、それではストレスが溜まるばかり。「永遠の刑罰」を下す神に委ねました。あとは地道に原発ゼロを主張してゆくだけです。