ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

隠れた文書の発見

 「それで、ダリヨス王は命令を下し、宝物を納めてあるバビロンの文書保管所を調べさせたところ、メディヤ州の城の中のアフメタで、一つの巻き物が発見された。その中に次のように書かれていた。『記録…』」(エズラ6:1−2)。
 文書保管場所に書かれたものが非常に多くあって、あまり人に知られたくないような場合、出来るだけ目立たない場所、発見が難しいような場所に隠したがる傾向があると思う。私も身に覚えがある。
 上記聖書個所はペルシャ王ダリヨスの時、前の王クロスの布告の文書が、アフメタという所で発見された事を記している。それはユダヤ人のエルサレム帰還と神殿の再建を宣言したものである。表記は違っても、この二人の王は実在した。そして特別ユダヤ人に好意的だった。並みのペルシャ王だったら、そんな「不都合な文書」など、ずっと放置していただろう。
 作家黒井千次氏の『流砂』という本を読んだ。黒井氏は1932年、東京の山の手にある杉並区高円寺生まれ、父は長部勤吾という検事であった。自伝的小説である。私は氏の他の小説を読んでみても分かるが、舞台がその界隈で、同じ杉並区西荻窪で生まれ育った者として懐かしさを覚える。死んだ兄は1933年生まれ、もしかしたら同じ学校で先輩後輩という時期があったかも知れない。
 この小説の設定は戦前の思想検事である父と、その息子との微妙に距離をとった関係を描いている。
 思想検事とは戦前の特高警察官と両輪をなした、思想犯罪を取り締まる検事の事である。
 それは過去の話と思うかも知れないが、現在の民主主義を守ろうとする私たちは、旧内務省から引き継がれた公安調査庁ブラックリストに、既に載っているかも知れない。
 だから息子はあまり父親の事は語りたくないし、何をやっていたかあまり詮索しなかった。
 しかし或る時、父親から2階の座敷の天袋に、その関係の古びた文書がしまい込まれている事を教えてもらい、そこへ行って、危なっかしい丸椅子に載りながら、幅1・8メートルの天袋の中を探った。
 私も経験があるが、この奥行きのある天袋の奥まで手を伸ばすのは難しい。まして足元がおぼつかないなら余計そうだ。私は勿論脚立を使った。
 紙包みや段ボール箱などが一杯詰まっているので、慎重な動作で、それらを床に降ろしてゆく。中身を調べるが、まだ目的のものは見つからない。そのうち息子は父親の書斎に入り、棚の一つの中に、他の書物と違う冊子を見つけた。それには「司法省調査課」とか、「思想犯の保護を巡って」などの題などが書かれており、まさに息子が求めていたものだった。一大発見だろう。
 内容として、左翼思想犯の転向と真の日本人への目覚めというくだりが気になった。戦前の日本基督教団の信徒が弾圧と迫害で、次から次へと転向した事に思いを馳せた。今またそういう時代に逆戻りしそうな、暗い世の中になって来たので、自己の信仰を確たるものにしなければと思った。
 本の紹介から、何気なく図書館で借りて読む事になったが、こうして読み返してみると、地味ながら良い本だった。