ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

復興五輪

「真実な証人はまやかしを言わない。偽りの証人はまやかしを吹聴する」(箴言14:5)

 2019年2月28日の福島民報を見たら、「復興五輪『浸透せず』半数」という見出しの記事があった。

 これは共同通信のアンケート調査の結果である。福島県宮城県岩手県の42市町村長を対象にしたもので、当然そうなると思った。

 被災3県の復興五輪という名を掲げているが、実際には東京五輪の意味だから、まさに「羊頭狗肉」という言葉がぴったりする。 ネットにある「浸透」の意味は「思想・風潮・雰囲気などがしだいに広い範囲に行きわたること」だが、およそ復興という言葉の実態は、現実と異なる。

 誰が「復興五輪」と名づけたのか分からないが、おそらく現首相かその近辺の人々だろう。

 原発被害の大きかった浜通りを何回か視察して来たが、新聞に載った福島県内の15市町村長の回答とは、だいぶずれがあった。特に帰還困難区域に属する大熊町双葉町の人々が、復興五輪について、どうして「どちらかというと浸透している」と言えるのか。避難先での生活再建に必死に取り組んでいて、望郷の念はありながらも、もはや戻れない人が多くいるのに。束の間テレビなどで競技を楽しむ事が出来ても、終わってしまえば、現実が重く圧しかかって来る。なのに為政者たる「彼らは重い荷をくくって、人の肩に載せ、自分はそれに指一本さわろうとは」せず(マタイ23:4)、自己責任論を振りかざす。

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 写真は大熊町の国道6号三角屋交差点。帰還困難区域で、入り口は厳重な検査体制が敷かれたまま。

 私は今いわき市に住んでいるが、震災当時そこだって一部は原発30キロ圏内だったし、津波地震の被害も大きかった。平中心部でも混乱は広がっていた。それが8年経て、双葉郡などから避難移住して来る人々の為の受け皿のようになってはいる。ゆえにいわき市長は岩手県宮古市市長と共に、「復興五輪」は、「浸透している」と述べた。その理由は「福島県で競技が開催され、聖火リレーのスタート地に選ばれるなど一定の役割が与えられている」からだと言う。これはまやかしの吹聴だろう。「復興!」の掛け声に沈黙を余儀なくされた人々の心が見えていない。

 3月12日五輪大会組織委員会は、3月26日に「Jヴィレッジ」(楢葉町広野町)を聖火リレーの出発地にすると正式に決めた。東日本大震災から10年目を迎える2020年、被災者を元気づけ、復興を後押しするのが狙いである。

 まやかしなのは、その楢葉町の北が、夜ノ森の帰還困難区域を抱え、いまだ除染効果が出ていない富岡町、さらに北が同じく帰還困難な大熊・双葉町と続き、一部指定解除になった浪江町は、ほとんど人が戻って来ないからだ。楢葉町を境に、北と南はがらっと様相が変わる。こんな対照的な地域はめったにないだろう。すぐ南が五輪で沸き返っても、北は冷えている。為政者もそれが分かっているから、今躍起になって除染を進め、富岡・大熊・楢葉の一部を指定解除し、それを全体的な「復興」だと、偽りの宣伝を決め込んでいる。

 被災地以外の日常生活を営んでいる人々は、「復興」五輪も何もない。ただ競技に熱中し「ああ楽しかった」で終わらせるのだろう。だから「東京」五輪のほうが、よほどすっきりする。