ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

『消されゆくチベット』(渡辺一枝著)を読んで考えた事

 「ゼデキヤの治世の第九年、第十の月の十日に、バビロンの王ネブカデネザルは、その全軍勢を率いてエルサレムを攻めに来て、これに対して陣を敷き、周囲に塁を築いた」(列王第二25:1)。
 1949年中華人民共和国は建国宣言を行い、チベットを侵攻しました。そして1965年には、中国はチベットを自国に組み入れてしまいました。左下図はダライ・ラマ14世。

 チベットはインド仏教の本流をそのまま継承している仏教国でしたが、マルクスの『ヘーゲル法哲学批判序説』にある「宗教は阿片だ」という言葉に従い、寺院のような建物や文化・風習などが文革の頃徹底的に破壊されたと言われています。その後の中国政府の緩和策で宗教活動も復活しましたが、僧侶たちの抗議行動は続き、特に2008年北京オリンピックを前にしての大抗議行動は中国政府を硬化させ、それを鎮圧した後かつてないほど厳しい監視体制を敷いているそうです。そして題名にあるようにチベットの伝統や文化は消されゆく方向に向かっていますが、数百万と言われるチベット人の祈りと願いにより、かろうじてそれが守られているようです。
 渡辺さんはこの本で伝統的なチベットの文化や風習を詳しく伝えています。私はキリスト教ですが、旧約の時代の風習とは良く似たところがあり、いろいろ参考になりました。

 まず登場するのがヤクです。ウシ科に属する動物です。野生のヤクはドンと呼ばれています。ヤクからは乳、バター、チーズ、肉が採れ、毛からはテント、袋、毛布などが作られます。また荷物の運搬にも使われます。ほぼ旧約の牛の利用と同じです。

次に農業ですが、主体となっているのは大麦・小麦ではなく裸麦の栽培です。これを煎リ、挽いて粉にしたのがツァンパで、主食です。近年は前者のほう、特に小麦に代えさせられているようです。
 こうした食べ物をチベット人は感謝の祈りを捧げてから食べます。「世界ではいま、あちこちで戦争をしている。アフガンだってイスラエルだってそうだろう。だが、みんなが武器を捨てて祈りの言葉を唱えるようになれば、世界はきっと平和になるのだ。祈りなさい…毎日祈りなさい」。キリスト教信徒もそうですし、金曜のデモのシュプレヒコールも同じです(少々過激ですが)。
 現代のチベット教育事情は複雑です。チベット人の同一性の為にはチベット語が必須です。それが読めないと仏教の経典も読めないでしょう。家畜に関わる言葉も豊富です。ところが中国政府の介入で「国家通用言語文字=中国語」が強制されるようになり、チベット人は文化・伝統・歴史そして精神までも奪われようとしています。
 紙作り。経典や経典の版木の為に紙作りは伝統工芸の一つとなっています。クサジンチョウゲという花の根から作るそうです。日本の和紙の原料ミツマタ、エジプトのパピルスと同じく、チベットでは代表的な漉き紙となります。

 最後に機織りに触れておきます。ヤクの毛、羊の毛などを用いて、糸に紡ぎ、布を織るのもやはり伝統工芸の一つです。左写真はヤクの毛を使って作ったテントで、ネットから借用。
 この本ははてなブログの友人からの情報で、借りて読みました。チベットの事を少しでも理解出来て幸いでした。
 中国政府の事はあまり言及しませんが、チベットを全て中国の支配下に置くというのは間違っています。抵抗運動が続くのも尤もな事です。